土地活用には、アパート経営以外にも様々な方法があります。
「土地活用には、どの様な種類・方法があるのだろうか?」
「それぞれの土地活用には、どの様なメリット・デメリットがあるのだろうか?」
「アパート経営がなぜ選ばれるのだろうか?」
と、悩んでおられる方はいませんか?
実は、どの土地活用を選択するかは、自身の経営姿勢に依ります。
この記事では大きく分けて次の5つについて詳しく解説していきます。
1.土地活用の種類
2.土地活用の方法やメリット、デメリット
3.アパート経営が注目される理由
4.アパート取得の方法
5.アパート経営の手順
ポイントは、収益性と参入障壁、バランスの良さを考慮することであり、それらを満たすのがアパート経営です。
<目 次>
1.土地活用の種類
土地活用には、様々な種類があります。
1-1.賃貸型・信託型・借地型
土地活用の主な分類として、賃貸型・信託型・借地型があります。
*信託
自身の資産を、信頼できる人や法人に託し、自身が決めた目的に沿って運用・管理してもらうこと
1-2.賃貸型・信託型・借地型の土地活用の特徴
賃貸型・信託型・借地型の特徴を、収益性・リスク・初期費用・参入障壁の観点で比較しますと、下表の通りです。
2.土地活用の方法やメリット、デメリット
賃貸型・信託型・借地型について、それぞれの具体的な土地活用方法について解説します。
2-1.賃貸型の土地活用
賃貸型の土地活用は、建築コストを要し、空室・家賃滞納などのリスクがありますが、収益性や節税効果が高いというメリットがあります。
管理方法には、自主管理・管理委託・一括借上げがありますが、その内容をまとめますと下表の通りです。
賃貸型の土地活用の具体的な方法は、下記の通りです。
・アパート経営・マンション経営
・戸建て賃貸経営
・駐車場経営:月極駐車場、コインパーキング
・商業系施設経営
・オフィスビル経営
・トランクルーム経営
・コインランドリー経営
・医療系施設経営
・介護系施設経営
以下にそれぞれの土地活用方法のメリット・デメリットなどを解説します。
2-1-1.アパート・マンション経営
アパート・マンション経営の概要やメリット・デメリットを解説します。
2-1-1-1.アパート経営の概要
アパート経営は、建物1棟を取扱います。
建物1棟につき、約6戸~10戸の賃貸住戸で構成されるのが、一般的です。
建物構造は、木造か軽量鉄骨造のケースが大半です。
建物階数は、1階~3階建てが大半です。
間取りは、1R、1K、1DK、1LDK、2DK、2LDK、3LDKなど様々です。
それらの住戸を賃借人に貸出し、家賃収入により事業を行います。
土地所有者の場合、立地がアパート経営に適すれば、新築して始めるケースがあります。
中古アパートを購入し、自主管理や不動産管理会社に委託して、アパート経営を始めるケースもあります。
2-1-1-2.マンション経営の概要
マンション経営は、分譲マンションの1戸~数十戸を取扱います。
建物構造は、鉄筋コンクリート造(RC造)か鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のケースが大半です。
建物階数は、3階~10階建てが大半です。
都心部になりますと、25階建て以上のタワーマンションの中から1住戸を取扱う方もおられます。
間取りは、アパート経営と同様に、1K、1DK、1LDK、2DK、2LDK、3LDKなど様々です。
それらの住戸を賃借人に貸出し、家賃収入により事業を行います。
2-1-1-3.アパート・マンション経営のメリット・デメリット
アパート・マンション経営のメリット・デメリットは、下表の通りです。
なお、アパート経営とマンション経営の違いは、下記の記事をご覧ください。
2-1-2.戸建て賃貸経営
戸建て賃貸経営は、一戸建て住宅を建てて賃貸し、家賃収入を得る土地活用方法です。
最近の傾向として、古家を安く仕入れて最低限度のリフォーム工事を施し、戸建て賃貸経営を始める人が、にわかに増えています。
築古戸建ての詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。
2-1-3.駐車場経営
駐車場経営には、月極駐車場やコインパーキングがあります。
2-1-3-1.月極駐車場
月極駐車場は、駐車スペースを賃貸し、毎月駐車料金を得る土地活用方法です。
2-1-3-2.コインパーキング
コインパーキングは、駐車スペースを時間単位で賃貸する土地活用方法です。
高い稼働率を維持できれば、駐車料金収入は月極駐車場と比較して、格段に上がります
2-1-4.商業系施設経営
貸店舗経営は、出店テナント側が必要とする建物・設備を建築・設置し、そのスペースを賃貸して家賃を得る土地活用方法です。
出店テナントとしては、
・コンビニエンスストア
・ファミリーレストラン
・ファーストフード店
・ドラッグストア
などがあります。
また、小規模スペースでも出店可能な、花屋・立ち食い店・立ち飲み屋などがあります。
2-1-5.オフィスビル経営
オフィスビル経営は、オフィスビルを建築し、入居者となる企業や団体から家賃を得る土地活用方法です。
管理運営は、専門性を有するため、専門管理会社に委託するか、一括借り上げにするケースが多くなります。
2-1-6.トランクルーム経営
トランクルーム経営は、土地や建物内に0.5坪~3坪までの大きさで区割りした収納スペースを設置し、物置として賃貸する土地活用方法です。
住宅やオフィスビル、貸店舗、駐車場の場合、空室・空車対策の一つとして、トランクルームを採用するケースが少なくありません。
特にマンション密集地やオフィスビル密集地の中に、所有する建物がある場合、需要が見込まれます。
また、トランクルーム専門業者とフランチャイズ契約を締結し、そのノウハウを活かして経営を行う方法もあります。
トランクルーム経営の形態として、屋外型と屋内型とがあります。
2-1-6-1.屋外型トランクルーム
郊外に利用されていない土地を所有している場合、トランクルームを設置することにより、屋外型のトランクルームを始めることができます。
中古のコンテナを改装した形態のトランクルームがよく見かけられます。
ただし、電気が通っていない土地の場合、空調設備を設置することができず、換気ができません。
したがって、物品によっては、カビが発生し腐る可能性があります。
利用者に対し、注意して利用を促すなどの周知徹底が必要です。
2-1-6-2.屋内型トランクルーム
空室となっている建物を所有している場合、建物内の空室部分にトランクルームを設置することにより、屋内型のトランクルーム経営を始めることができます。
ただし、空調設備を設置することで、換気を良くする必要性があります。
理由は、屋内の湿度が高くなりますと、物置の中の物品にカビが発生する可能性があるからです。
2-1-7.コインランドリー経営
コインランドリー経営は、建物内に大小様々な洗濯機や乾燥機などを設置し、有料で貸し出す土地活用方法です。
自宅の洗濯機では、対応できない洗濯物などが利用されるケースが多いです。
また、靴専用の洗濯機などが設置されているコインランドリーもあり、需要が多いです。
洗濯物を容易に持ち込める駐車場がありますと、需要が増加します。
2-1-8.医療系施設経営
医療系施設経営は、クリニックや総合医療ビル(各種病院・クリニック、調剤薬局などを集約)を建築し、開業したい個人医院や医療法人、医療コンサルティング会社に賃貸する土地活用方法です。
2-1-9.介護系施設経営
介護系施設経営は、建物を建築し、介護事業者に建物を一括借り上げ方式(リースバック方式)で賃貸する土地活用方法です。
介護系施設には、多くの種類が存在し、
・サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)経営
・老人ホーム経営
・デイサービス経営
・グループホーム経営
などがあります。
各介護系施設により、提供されるサービスが異なります。
また、各介護系施設の条件に適合する建物の規模や設備内容、施設供給の総量規制(行政による建築規制)などが異なります。
医療機関が近隣に存在し、高齢者が多い地域では、介護系施設経営は、おすすめの土地活用方式となります。
2-2.信託型の土地活用
信託型土地活用の特徴は、信託銀行やディベロッパーの資金やノウハウを活用し、土地の収益化を図るものです。
自身で資金調達をして建物を建築し、収益化を図ることに対して不安があり、自信が無い方にとっては有効な方法です。
ただし、信託先の事業者が、収益性の精査や収益配分の調整を厳しく行いますので、収益は少なくなります。
ローリスク・ローリターンの土地活用方法です。
信託型土地活用の方法には、等価交換と土地信託があります。
2-2-1.等価交換
等価交換は、土地をディベロッパーなどに譲渡(売却)して建物を代行して建築してもらい、土地の価値に相当する建物の一部分の所有権を得る土地活用方法です。
都市部において最寄り駅に近いなどの条件の良い土地を所有している場合、等価交換を利用する価値はあります。
2-2-2.土地信託
土地信託は、土地を信託銀行や信託会社に預託して活用してもらい、収益を調整して信託配当金を得る土地活用方法です。
土地信託を行う際、信託会社や信託銀行と信託契約を締結します。
その際、信託登記が行われ、土地の所有権が信託会社に移ります。
依頼者は、信託受益権を得ることとなり、収益から経費などを差し引いた利益の中から信託配当金を得ることができます。
2-3.借地型の土地活用
借地型土地活用には、定期借地があります。
定期借地は、一定期間、土地を賃貸して借地料金を得る土地活用方法です。
定期借地権は、平成4年8月に施行された「借地借家法」により生じました。
それまでの普通借地権は、借地人の希望により借地契約を更新することが可能であり、貸地が事実上戻ってこないという事態になっていました。
しかし、定期借地権は、当初に定めた契約期間で借地関係が終了し、その後の更新は無くなります。
定期借地権には、3種類のタイプがあります。
3.アパート経営が注目される理由
アパート経営が注目される理由として、
・土地活用方法の特徴
・相続税課税対象者の増加
・収益増加の仕組み
などがあります。
3-1.土地活用方法の特徴
上記の「1.土地活用の種類」において解説しましたが、土地活用の種類として、賃貸型・信託型・借地型の土地活用があります。
それぞれの特徴は、下表の通りでした。
アパート経営は賃貸型の土地活用となります。
賃貸型の土地活用は、収益性が高く、リスクは中ほど、初期費用が高く、参入障壁の低い土地活用です。
特に、収益性が高く、参入障壁の低い点が、賃貸型土地活用が選択されやすい理由です。
また、賃貸型の土地活用の中にも、上記で解説した様々な活用方法があります。
それらを、収益性・節税効果・リスク・手軽さという指標で比較しますと、下表の通りです。
アパート経営は、バランスの良い土地活用方法となり、その結果として注目度が高くなります。
3-2.相続税課税対象者の増加
相続税は、2015年(平成27年)1月1日より相続税法が改正され、それに伴い増税されました。
国税庁は、毎年相続税の申告状況のデータを発表しています。
3-2-1.相続税の申告実績(※1)
改正前年までは、4.4%の被相続人に課税されていましたが、改正後には8.0%と約2倍の被相続人に課税されるようになりました。
その後年々、課税割合、相続税納税額は増加しています。
(出所:国税庁)※1
(出所:国税庁)※1
(出所:国税庁)※1
3-2-2.相続税の課税対象者増加の原因
相続税法改正により、基礎控除額が4割減少したことに起因して課税対象者が増加しました。
例えば、法定相続人が3人(妻と子供2人)のケースでは、相続税法改正前と改正後の基礎控除額の違いを下表にまとめますと、
となります。
6割に課税対象額が引き下げられたことにより、課税対象者が約2倍に増加しました。
したがって、相続税対策を行う必要性のある人が急増し、相続税対策に有効なアパート経営が注目を集めました。
3-2-3.アパート経営が相続税対策に有効な理由
土地の相続税評価は、路線価方式で評価され、地価公示価格の約80%の価格となります。
また、土地にアパートを建て賃貸しますと貸家建付地評価となり、土地評価額はさらに21%(借地権割合70%×借家権割合30%)下がります。
- 借地権割合が60%の場合、土地評価額は、60%×30%=18%下がります。
建物の相続税評価は、固定資産税評価が使われ、一般的に建築工事費の40%~50%の評価になります。
また、アパートのように賃貸されている場合、建物の相続税評価額は、さらに30%(借家権割合)下がり、70%の評価となります。
以上をまとめますと、下表の通りです。
土地、建物を合わせますと、相続税評価は約50%まで落ちます。
現金・有価証券の相続税評価は100%となりますので、この差は歴然です。
なお、相続税の詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。
3-3.アパート経営の収益構造
アパートの収益は、
・インカムゲイン(家賃収支)
・キャピタルゲイン(売買差益)
によります。
アパート経営のノウハウ・スキルを習得しますと、自主管理ができます。
自主管理ができますと、インカムゲイン・キャピタルゲインの両者をプラスにすることができます。
そのことも、アパート経営が注目を集める一つの理由です。
4.アパート取得の方法
アパート取得の方法として
1.中古アパートを購入
2.新築アパートを購入
3.所有する土地にアパートを新築
4.土地を購入してアパートを新築
のケースがあります。
4-1.中古アパートを購入
中古アパートは、
・築1年を経過したアパート
・一度売買され、名義変更がなされたアパート
です。
中古アパートの購入は、不動産会社を通して行われるのが一般的ですが、その際に仲介手数料が発生します。
仲介手数料の上限は、下表の通りです。
4-1-1.中古アパートを購入するメリット
4-1-2.中古アパートを購入するデメリット
4-1-3.中古アパート購入時のポイント
中古アパートの購入時に配慮すべきポイントは、併せて出口戦略(売却戦略)も考えておくことです。
そのため、築年数に配慮する必要があります。
4-2.新築アパートを購入
新築アパートは、
・一度も売買され名義変更されていない築1年以内のアパート
・建築中で数か月以内に竣工するアパート
です。
事業主から直接購入しますと、不動産仲介手数料は不要です。
しかし、事業主ではない不動産仲介会社を通して購入しますと、不動産仲介手数料は発生します。
不動産仲介手数料の限度額は、上表の通りです。
4-2-1.新築アパートを購入するメリット
4-2-2.新築アパートを購入するデメリット
4-3.所有する土地にアパートを新築
相続や贈与、過去に購入したなど、所有する土地にアパートを新築する場合、建築目的・建築規模・建築構造・建築予算・想定入居者層などを決める必要があります。
それらを決める際、周辺の競合物件や相場家賃、入居率などの調査(マーケティング)を行い、データに基づき、事業計画を作成する必要があります。
この部分を疎かにして事業計画を立てますと、
・金融機関によるアパートローンの審査を通過できない事態
・建築後に入居者募集に大苦戦する羽目
に陥りますので、注意が必要です。
4-3-1.所有する土地にアパートを建築するメリット
4-3-2.所有する土地にアパートを建築するデメリット
4-4.土地を購入してアパートを新築
土地を購入してアパートを新築する場合、アパートに最適な立地を探すところから始めますので、より自由度が高くなります。
その分、土地購入費が加算されての事業計画書の立案が必要になりますので、入念な作業を要します。
そもそも土地購入してまでのアパート建築の目的を、明確にする必要があります。
4-4-1.土地を購入してアパートを新築するメリット
4-4-2.土地を購入してアパートを新築するデメリット
5.アパート経営の手順
アパート経営の手順は、アパート購入または建築・アパート運営・アパート売却の3段階になります。
5-1.アパート購入または建築
アパート経営を始める(購入または建築)までの流れは、下表の通りです。
なお、ステップごとの詳しい内容につきましては、下記記事の「3.アパート経営を始めるまでの流れ」をご覧ください。
5-2.アパート運営
アパート運営は、入居者管理・建物管理・資金管理となります。
大家としてのアパート経営に対する姿勢が、明確に出るところです。
入居者へのサービスや建物維持管理に真摯に向き合えば、
・高入居率
・家賃収入の安定
は自ずとついてきます。
なお、アパート運営の詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。
5-3.アパート売却
キャピタルゲイン(売買差益)を獲得できるか否かの結果が出ます。
と同時に、アパート経営の総収支結果が出ます。
アパート経営の総収支は、
インカムゲイン + キャピタルゲイン
=(家賃収入 ― 支出)+(売却価格 ― 購入価格)
により算出されるからです。
インカムゲイン(家賃収支)がプラスでも、キャピタルゲイン(売買差益)のマイナスが大きければ、アパート経営の総収支は、マイナスとなり、アパート経営は失敗となります。
インカムゲイン + キャピタルゲイン > 0:成功
インカムゲイン + キャピタルゲイン < 0:失敗
合計によるアパート経営の判定(目安)
6.まとめ
以上、
1.土地活用の種類
2.土地活用の方法やメリット、デメリット
3.アパート経営が注目される理由
4.アパート取得の方法
5.アパート経営の手順
について解説しました。
土地活用の種類には、賃貸型・信託型・借地型があります。
その中で、収益性が高く、参入障壁の低い土地活用は賃貸型となります。
また、賃貸型には、下表の土地活用方法があります。
いちばん、バランスの良い土地活用方法は、アパート経営となります。
さらに、相続税課税対象者が増加したのに伴い、その対策として有効な方法がアパート経営となります。
アパート経営の収益構造も魅力の一つです。
以上の理由により、アパート経営は注目を集め、特に資産を多く所有する方にとっては、有効な対策となっています。
アパート経営のノウハウ・スキルを身に着け、長期安定収入と節税を図ることをおすすめいたします。
7.参考・引用Webサイト
※1 「令和元年分 相続税の申告事績の概要」
国税庁
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf
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