注目を集めているメタバースやその中での不動産取引は、Facebook創業者マークザッカーバーグによる「Meta」への社名変更発表から、急激に伸ばしています。
その様な状況下におきまして、
「メタバースでの不動産取引は、リアルの取引と何が違うのだろうか?」
「メタバースでの不動産購入は、どうすれば良いのだろうか?」
と悩んでおられる方はいませんか?
実は、やっていることは、リアルとあまり違いはありません。
ポイントは、不動産価値はメタバースの利用者数や暗号資産の変動により影響されます。
<目 次>
1.メタバースの概要
2021年、メタバースプラットフォーム上位4社による不動産売却価格の総計は、約5億ドル(約575億円)以上になることが判明しました。
購入者の中には、多数の不動産会社も含まれています。
「そもそもメタバースとは何なのか?」から解説します。
1-1.メタバース
メタバース(metaverse)は、インターネット上の仮想空間の一つです。
・メタ(meta):「超越した」
・ユニバース(universe):「宇宙」
との合成語です。
メタバースにおいて、利用者はアバターを使用して交流や買い物、イベント開催などの様々な活動が可能です。
1-2.セカンドライフ
2006年にメタバースの先駆けとして「セカンドライフ」が注目を集めました。
仮想空間で、利用者は自身が決めたアバターとなり、他の利用者と交流することができました。
また、仮想通貨である「リンデンドル」で売買も可能です。
さらに、注目を集めたのが土地売買で、投資目的も含めて一時は過熱したこともあり、100万ドル以上稼いだ人も現れました。
個人の利用者のみならず、IT企業・メディア・金融機関・自動車メーカー・ファッションブランドなど数多くの企業が参加し、発表会の開催やプロモーション活動を展開しました。
しかし、利用者は高性能なグラフィック機能を有するPCが必要となり、操作できるまでに時間もかかります。
また、企業の参画が先行し、仮想空間内には広告ばかりという状態になり、利用者が減少し企業も撤退しました。
1-3.Facebookの公式発表
2021年7月、Facebookの創業者であるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)が、
「今後数年のうちに、Facebookはソーシャルメディアを主とする企業ではなく、メタバースの企業とみなされる」
と発言しました。
同年10月には、メタバース構築に向けて、5,000万ドル以上投資し、Facebookの社名をMetaに変更することを表明しました。
その背景として、技術発展が下支えしています。
- VRヘッドセットの発達:比較的安価
- スマホの高性能化と普及:スマホからメタバースへアクセス可能
- 多数利用者の同時接続可能:造時に数万人が接続可能
などの技術発展が下支えしています。
2021年時点でのメタバースのサービスは、2006年当時と比較しますと、格段に向上しています。
2021年8月、Facebook(現在Meta)は、VRヘッドセットを使用して仮想空間内でミーティングができる「Horizon Workrooms」を開始しました。
利用者は、自身でアバターを選択し、仮想空間の会議室に入室できます。
2.メタバースの不動産について
世界中からメタバースの土地取引は、注目を集めています。
特に、不動産投資ファンドであるリバブリック・レルムは、2021年11月、メタバース「ザ・サンドボックス」の土地を430万ドル(約5億円)で取得したことに対して注目を集めました。
2-1.「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」
ザ・サンドボックスは、シミュレーションゲームの一つですが、「マインクラフト」に似ています。
利用者は、無料ツールを使用して、オリジナルのアイテムやアバター、建物などを制作・販売可能です。
また、オリジナルのゲーム制作も可能です。
「sand」という通貨が使用されており、1sand=300円前後で取引きされています。
ちなみに、FacebookがMetaに社名変更した2021年10月以降、メタバースでの土地取引が急増し、2021年12月末時点で累計取引額は、3億ドル(約350億円)を突破し、メタバース不動産プラットフォームにおいて1位の売上高となっています。
2022年2月には、高級ブランド:グッチ(Gucci)が、土地を購入しました。
土地売買は、盛んに行われています。
日本経済新聞
2-2.「Decentraland(ディセントラランド)」
ディセントラランドでも、土地売買が可能であり、アイテムの制作・販売も可能です。「MANA」という通貨が使用されており、1MANA=900円前後で取引きされています。
購入した土地のカスタマイズは自由です。
画像・動画・3Dモデル・音声などを活用すれば、面白いオリジナル空間の演出が可能です。
- 振作発表会
- アート展示会
- 音楽フェスティバル
などを開催でき、プロモーション活動を展開する企業もあります。
ちなみに、カナダの投資会社トークンズ・ドット・コムの子会社が、メタバースでのファッション地区の土地を約250万ドル(約3億円)で取得しました。
また、「リバブリック・レルム」は、東京の原宿をアレンジした「メタジュク(Metajuku)」というショッピング街をオープンしています。
さらに、「テラゼロ」は、土地購入する利用者に対して、初の「メタバース住宅ローン」を提供しました。
3.メタバースの不動産活用方法
メタバースの不動産と現実の不動産を比較し、その相違の度合いから活用方法が見えてきます。
3-1.メタバースの不動産と現実の不動産の違い
メタバースの不動産と現実の不動産を比較した場合、全く違うものと考えられる傾向にあります。
しかし、両方の不動産が持つ機能や役割は似通っています。
3-1-1.現実の不動産
現実の不動産は、「民法第86条第1項」によりますと、「土地および土地に定着しているもの」と定義されており、それ以外は動産になります。
定着物には、建物・立木・橋・石垣などがあたり、建物は「登記法」上、屋根・柱・壁を備えた時点で不動産となります。
現実の不動産の特徴は、位置が変わらず所在を容易に確認できる点です。
特に日本の場合、全国に法務省管轄の法務局が点在し、不動産登記システムが稼働して、登録されている様々な土地・建物情報を公開しています。
登記簿謄本(全部事項証明書)には、
- 土地の所在地、種類、敷地面積、取得原因、登記日付
- 建物の所在地、種類、構造、床面積、取得原因、登記日付
- 権利部(甲区):登記の目的、受付年月日、権利者(共有者・共有割合)、権利者住所、取得原因
- 権利部(乙区):抵当権(借入日、借入金額、金融機関名、利息、残債の有無)
が記載されています。
そのため不動産は、動産と比較して価値が担保されてきました。
3-1-2.メタバースの不動産
メタバースの不動産は、証明書の役割を担う「NFT」(*1)で記録・売買されますので、所有者情報が担保されます。
また、「ザ・サンドボックス」においては、土地区画の上限数を166,464区画と決められています。
したがって、同じ土地が存在せず、希少性をもたらすことが可能です。
3-1-3.最大の違いは、取引時間
不動産を購入する場合、売主と買主と不動産仲介会社の3者が少なくとも一堂に会し、売買手続きを行う必要があります。
それも売買契約時と決済時の最低2回は、面会する必要があります。
決済時には、金融機関の担当者や司法書士の同席も必要になります。
しかし、メタバースでの不動産取引の場合、オンライン上で全て処理されます。
一堂に会することはありませんので、物理的な移動や制約は一切なく取引を進めることができ、大幅な時間短縮となります。
3-2.メタバースの不動産活用方法
メタバースの不動産活用方法には、
- 店舗を建築しての物販活動
- 土地の賃貸やアパート・マンションを建築しての賃貸
- キャピタルゲイン(売買差益)の獲得
の3つの方法があります。
3-2-1.店舗を建築しての物販活動
メタバースの不動産において、購入した土地に建物を建てて店舗、ショッピングモールなどを建築し、物販活動を行うことが可能です。
実際に、「エブリレルム」は店舗を建築し、1万点ものデジタルアイテムを1時間で売り切る実績を挙げています。
3-2-2.土地の賃貸やアパート・マンションを建築しての賃貸
土地を購入してオーナーとなり、借地して利用者から借地料を徴収することが可能です。
また、アパート・マンションを建築して、利用者に賃貸して家賃を徴収することも可能です。
3-2-3.キャピタルゲイン(売買差益)の獲得
土地・建物が値上がりした場合、売却してキャピタルゲイン(売買差益)を獲得することも可能です。
3-3.LAND
LANDは、メタバースにおける土地区画の最小単位です。
LANDの大きさは、プラットフォームにより異なり、5~6m四方から15~16m四方までまちまちです。
「ザ・サンドボックス」の場合、複数のLANDを集めた区画をESTATEとして取引しています。
LANDは、NFTとして発行されます。
この様に、現実の不動産と比較して、取引時間以外では大きな違いが無いことに気づかれると思います。
要は、バーチャルとリアルの違いだけで、行うことはほとんど同じです。
それらの活用を可能にした技術が、ブロックチェーン(*2)とNFTです。
4.メタバースの不動産購入方法
メタバースで収入を得る方法は、
- 各メタバースにおいて使用されている仮想通貨の売買
- 各メタバース内の土地や商品の売買・賃貸
です。
この記事では、メタバース内での土地の購入方法について解説します。
そのステップとして下記の4段階になります。
- 仮想通貨購入
- 仮想通貨ウォレット(財布)の準備
- メタバースと仮想通貨ウォレットの連携
- メタバースで土地購入
それぞれ解説します。
4-1.仮想通貨購入
各メタバース内での土地取引は、仮想通貨で行われます。
土地を購入するためには、仮想通貨への交換が必要になります。
仮想通貨への交換サービスは、多数存在しますが、日本国内のサービスを利用することをおすすめします。
おすすめサービスは、
- 「GMOコイン」
- 「コインチェック」
- 「DMM Bitcoin」
などです。
4-2.仮想通貨ウォレット(財布)の準備
仮想通貨ウォレットは、通貨を保管する場所のことで、仮想通貨用の電子財布と理解すればよいです。
仮想通貨をセキュリティの高いウォレットに保管しておけば、ハッキングなどで盗まれる可能性は低くなります。
ここでの注意点は、
- メタバースで多用されているイーサリアム系の仮想通貨に対応
- 各メタバースのプラットフォームに対応
しているかになります。
例えば、「ザ・サンドボックス」と取引するには、
- 「Metamask」
- 「Wombat」
- 「installWallet」
の仮想通貨ウォレットを準備する必要があります。
各仮想通貨ウォレットに関する情報が多数公開されていますので、ここでは使用方法を割愛させていただきます。
仮想通貨ウォレットを準備できれば、メタバース外部の取引空間である「OpenSea」においても取引可能となります。
4-3.メタバースと仮想通貨ウォレットの連携
メタバースと仮想通貨ウォレットの連携は、各メタバースにより違いがありますので、それぞれの方法を確認する必要があります。
メタバース公式サイトが、英語表記のみの場合、解説サイトが多数公開されていますので、それらを参考にしますと、連携可能となります。
4-4.メタバースで土地購入
メタバースでの土地購入方法には、
- NFTマーケットプレイスでの購入
- LANDセールに参加
の二通りがあります。
4-4-1.NFTマーケットプレイスでの購入
土地(LAND)の購入は、NFTマーケットプレイスでの購入が一般的です。
購入方法は、
- LANDのオーナーが、OpenSeaなどのNFTマーケットプライスにおいて個人で販売
- 仮想通貨取引所がオーナーであるLANDを、直営のNFTマーケットプレイスで販売
している機会を捉えて購入します。
日本では、「コインチェック」が、2021年にローンチしたNFTマーケットプレイス「Coincheck NFT」において、「ザ・サンドボックス」のLANDを販売しています。
実際にLANDの販売は、2021年において4月、7月、12月の3回行われました。
4-4-2.LANDセールに参加
LANDセールは、各メタバース不動産プラットフォームにおけるLANDの一次販売のことです。
現時点でOpenSeaなどの流通市場に出回っている「ディセントラランド」「ザ・サンドボックス」のLANDも、始まりはそれぞれのLANDセールでした。
4-4-3.投資の考え方
メタバースでの土地購入は、売買差益を目的とする場合、現実の土地購入と変わりはなく、「安く購入して高く売却する」は同じです。
今後もメタバース不動産プラットフォームが数多く建ちあがると想定できます。
その際、LANDセールの機会を捉えて安く購入できますと、キャピタルゲイン(売買差益)を獲得できる可能性が高くなります。
しかし、購入した金額よりも下落するリスクもありますので、そのプラットフォームの利用者数が鍵となります。
利用者数が多数であれば、不動産価格は上昇しますし、利用者数が少数であれば、不動産価格は下降します。
また、購入する場合、各メタバースの仮想通貨取引価格を確認します。
仮想通貨のレートは日々変化するため、
- 土地価格の変動
- 仮想通貨の変動
の両方を見極めての売買が大切です。
5.メタバースの不動産のリスク
メタバースの不動産のリスクについて解説します。
5-1.不動産価値は利用者数次第
現時点において、不動産供給数を制限しているメタバースは、「ザ・サンドボックス」などですが、新たなメタバースが続々と誕生することは容易に想定できます。
その場合、不動産価値を維持する指標は、
- 各メタバースの利用者数
- 購入した土地区画の利用者数
次第と考えられます。
例えば、
- 「ザ・サンドボックス」「ディセントラランド」のように、現時点で高価な区画であったとしても、利用者数が減少すれば、価値は下落
- ショッピングモールや映画館などの商業施設を建築した場合、利用者が集まらなければ、その商業施設としての価値は下落
などです。
5-2.仮想通貨の相場にも影響
メタバース不動産は、購入時にイーサリアムなどの暗号資産を購入通貨としています。
暗号資産の価格暴落により、不動産の担保価値が減少する可能性はあります。
6.大手企業がメタバース不動産市場へ参入
米国の企業を中心として、メタバース不動産市場へ続々と参入しています。
6-1.米国の動向
FINANCIAL TIMESは、メタバース不動産販売は、2021年において5億ドルを突破し、2022年には倍増すると予測しています。
6-1-1.メタバースの不動産販売額(※7)
4つの主要なメタバースプラットフォームである
- ザ・サンドボックス(The Sandbox)
- ディセントラランド(Decentraland)
- クリプトボクセル(Cryptvoxels)
- ソムニウム・スペース(SOMNIUM SPACE VR)
の2021年におけるメタバース不動産販売額は、5億100万ドル(約576億円)に達しました。
また、2022年1月の売上高は、8,500万ドル(約98億円)を超えた模様です。
このペースで売上高が伸びますと、2022年の売上高は、10億ドル(約1,150億円)に達する見込みです。
一方、ブランドエッセンス市場調査の報告によりますと、メタバース不動産市場は、2022年~2028年の期間、年率3.1%の複合年率で成長すると想定しています。
6-1-2.リバブリック・レルムの動向(※8)
代替資産クラウドファンディングプラットフォームである「リバブリック(Republic)」は、メタバース不動産物件への投資を積極的に行っています。
デジタル證券の第二取引市場を目指す投資プラットフォーム「リバブリック」が、171億円超を追加調達したことも話題になりました。
また、「リバブリック」は、「リバブリック・レルム」を独立させ、エブリレルム(Everyrealm)という私企業にし、リバブリックは残すと発表しました。
エブリレルムは、メタバースコンテンツの開発も手掛けており、「ディセントラランド」での小売店のコンセプトを立ち上げ、他のメタバースプラットフォームにも拡大する予定です。
この店舗において、1万点のバーチャルアイテムが1時間で売り切れになった実績があります。
一方、「ソムニウム・スペース(Somnium Space)」においては、「レルム・アカデミー(レルム・アカデミー)」というバーチャルキャンパスを運営しています。
利用者は、オンラインコースを通して「Web3」のコンセプトについて学習可能です。
初回クラスにおいて、約500人の生徒が講習費として1,000ドル(約12万円)を支払い参加しています。
6-2.日本の動向
日本の動向ですが、渋谷区公認の「バーチャル渋谷」がオープンしました。
日本初となる自治体公認の都市連動型メタバースであり、バーチャルイベントプラットフォームでもあります。
2020年5月、KDDI・渋谷未来デザイン・渋谷区観光協会を中心とする参画企業73社で組成する「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」により運営されています。
立ち上げ以降、可動エリアを広げながら、様々なバーチャルイベントを定期的に開催しています。
例えば、
- 「#渋谷攻殻NIGHT by au5G」
- 「バーチャルハロウィーン」
- 「シブハル祭」
などです。
「バーチャル渋谷」の紹介動画をご覧ください
「バーチャル渋谷」の参画企業は、以下の通りです。
大手企業が多数参画しているのがわかります。
ちなみに、土地取引の機能は、まだありません。
7.まとめ
以上、
1.メタバースの概要
2.メタバースの不動産について
3.メタバースの不動産活用方法
4.メタバースの不動産購入方法
5.メタバースの不動産のリスク
6.大手企業がメタバース不動産市場へ参入
について解説しました。
米国におけるメタバースプラットフォームでの不動産売上高は、2021年には約5億ドル(約575億円)を超え、2022年には約10億ドル(約1,150億円)に達する見込みです。
日本には、土地取引可能なメタバースはまだ存在しません。
いずれ土地取引が可能になるメタバースが、ローンチされることが期待されます。
8.関連記事
9.参考・引用Webサイト
※1 「これまでにない作業環境」
Meta Quest
https://www.oculus.com/workrooms/
※2 「Decentraland Metajuku Shopping District」
Everyrealm
※3 The Sandbox
※4 「THE SANDBOX」
OpenSea
https://opensea.io/collection/sandbox
※5 Decentraland
※6 「バーチャル渋谷」
メタバースプラットフォームcluster
https://cluster.mu/w/79347fb9-05f5-429e-ab5f-8951ee8cd966/entry
※7 「メタバース不動産販売は5億ドルを突破し、今年は倍増すると予測」
CNBC
※8 「デジタル証券の第二取引市場を目指す投資プラットフォームRepublicが171億円超を追加調達」
TechCrunch
デジタル証券の第二取引市場を目指す投資プラットフォームRepublicが171億円超を追加調達 | TechCrunch Japan
※9 「バーチャル渋谷 体験ビデオ」
渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト
※10 バーチャル渋谷参画企業
渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト
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