アパート経営において、最重要事項は物件探し・購入にあります。
「具体的にどの様な物件を探せば良いのだろうか?」
「どのような方法で探せば良いのだろうか?」
と悩んでおられる方はいませんか?
実は、相続物件を不動産業者の目線で購入しますと、「お宝物件」になります。
ポイントは、不動産仲介業者を通して登記簿謄本を取り寄せ、いかに安く仕入れるかによります。
<目 次>
1.相続市場の規模
国内の相続資産市場は、年間約50兆円あります。
1-1.相続資産市場は年間約50兆円
野村資本市場研究所が公表している調査結果によりますと、国内の相続資産市場は、年間約50兆円あり、巨大な市場を形成していることがわかります。
その内訳は、不動産が約55%、金融資産が約34%を占めます。
相続される不動産の中には、居住物件、商業物件などがあります。
特に居住物件の中には、賃貸住宅であるアパートやマンション、戸建てなどが多数含まれます。
1-2.相続税課税対象者の増加
相続税は、2015年(平成27年)1月1日より相続税法が改正され、それに伴い増税されました。
改正前年までは、4.4%の被相続人に課税されていましたが、改正後には8.0%と約2倍の被相続人に課税されるようになりました。
また、一人当たりの相続税の納税額は、2019年時点で1,714万円となります。
相続人の中には、相続したアパートなどに対して運営を拒み、相続税の納税資金に充てるため、早く売却したいと考えている方が少なからずおられます。
早く売却したいと考えておられるオーナーは、売却価格よりも早く処分したいという気持ちが勝る傾向にあるため、相場よりも安く手放す傾向にあります。
不動産業者などは、そこに目を付け安く仕入れて再販を行います。
2.アパート購入における不動産業者の目線
不動産業者は、相続案件や訳あり案件などを安く仕入れ、40%前後の利益を上乗せし、不動産ポータルサイト(「楽待」「健美家」「LIFULL HOME’S」など)に載せて再販します。
例えば、5,000万円で仕入れたアパートを、6,500万円~7,500万円で再販し、粗利益として1,500万円~2,500万円を稼ぎます。
不動産業者が仕入れて再販する物件を購入しても、儲けは出ませんので注意が必要です。
不動産業者の再販物件を購入するのではなく、不動産業者と同じ目線に立ち、相続物件を狙いに行くのが、賢明な購入方法といえます。
3.アパート相続物件の特徴
アパート相続物件の特徴として、
・相続人は不動産相場を知らないケースが多い
・相続人が抱える諸事情により値下げ交渉が容易
・不動産ポータルサイトに多数掲載
などです。
3-1.相続人は不動産相場を知らないケースが多い
被相続人(亡くなった方)が所有していたアパートを相続した場合、被相続人は、投資家の可能性がありますが、相続人の大半は投資家ではなく、不動産相場を知らないケースが大半となります。
したがって、相続したアパートを、不動産業者を通して売却する際、不動産業者の言うとおりに売却価格を設定するケースが少なくありません。
3-2.相続人が抱える諸事情により値下げ交渉が容易
例えば、アパートの売却価格が7,000万円の場合、相続直後の物件であれば、5,000万円になる可能性を秘めています。
相続人の事情として、相続が発生した場合、10か月以内に相続税の納税義務が法律により発生します。
売主側としては、少しでも高く売却したいという心理が働くため、売却開始直後の大幅な値引き交渉に対しては、当然のごとく拒否します。
しかし、アパート経営を行う気がなく、早く売却して現金化し、遺産分割なり相続税納税資金に充てたいと考えている場合、売却目途が立たずに半年経過すれば折れてくる可能性が高まります。
少なくとも、相続手続き(名義変更手続き)に半年を要するため、残り4か月で処理する必要があります。
また、相続税納税を済ました場合であっても、アパート経営を行うつもりが無いオーナーは、管理費や修繕費、固定資産税などの必要経費が発生するため、早く処分したいと考えます。
そのため、当初拒否していた価格交渉に対して、徐々に聞く耳を持つようになります。
肝心なことは、売主に対する値引き交渉を、当初は断られることを前提にして、買付証明書を出しておくことが重要です。
そうしておきますと、後日売主側から折れて了承する可能性があります。
3-3.不動産ポータルサイトに多数掲載
相続アパート物件は、意外と不動産ポータルサイト(「楽待」「健美家」「LIFULL HOME’S」)に掲載されていることが多いです。
大手不動産会社のサイトにも多数の物件が掲載されています。
しかし、検索して物件概要書を見ましても、どこにも相続案件とは記載されていません。
相続案件の探し方につきましては、次章で解説します。
4.アパート相続物件の探し方
ターゲットとする物件は、
・最寄り駅から徒歩15分以内、もしくは駐車場完備
・築20年前後のアパート
・利回り:表面利回り・実質利回り・ROI
・登記簿謄本
について検討します。
先ず、上記の検索機能のある不動産ポータルサイトや大手不動産会社サイトから相続アパート物件を探します。
4-1.最寄り駅から徒歩15分以内もしくは駐車場完備
アパートの立地は、最重要項目です。
4-1-1.大都市・大都市郊外物件の場合
最低限度の立地条件を整えませんと、どんなに安く購入できたとしても、入居者が付かなければ、アパート経営は成り立ちません。
最低条件として、最寄り駅から徒歩15分圏内のアパートに絞ることをおすすめいたします。
4-1-2.地方物件の場合
地方物件の場合、自動車での移動が当たり前になります。
最寄り駅からの近さよりも、駐車場完備の方が優先される地域もあります。
アパート戸数分の駐車台数が完備されていれば、最寄り駅から徒歩30分以上かかる場合でも、入居者が埋まりやすい地域もあります。
なお、地方のアパート経営につきましては、下記の記事をご覧ください。
4-2.築20年前後のアパート
築20年前後のアパートが狙い目となります。
4-2-1.築20年前後のアパート
築20年前後のアパートは、アパートローンを組んでいたとしても返済がかなり済んでおり、ローン残債が少なくなっています。
したがって、アパート所有者が売却しても、担保割れ(売却価格<ローン残債)する可能性が低くなり、手離れが良い状態にあります。
なお、中古アパート経営の詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。
4-2-2.新築アパート・築浅アパート
新築アパートや築浅アパートになりますと、ローン借入額が全く減少していない状態となります。
売却しても担保割れする可能性が高くなり、借入額を返済できないため、貸出しをした金融機関から売却を断られることになりがちです。
もしくは、不足分(=ローン残債―売却価格)を、自己資金を出してまで売却しようと考える売主は、なかなかいません。
なお、新築アパート経営の詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。
4-2-3.築古アパート
築40年~築50年の築古アパートになりますと、金融機関の融資が厳しくなります。
また、建物や設備・器具の劣化損傷が進み、相当なリフォーム費用を投入しないと、入居者が付かなくなります。
さらに出口(売却)が無くなる可能性もあります。
築古物件を安く購入してリフォームし、再生するスタイルが流行っていますが、出口にリスクがありますので、注意が必要です。
したがって、築20年前後の物件が狙い目となります。
筆者も築20年前後の物件を購入し、10年間運営をして築30年前後で売却するスタイルを長年続けています。
相続アパート物件に限らず、物件の探し方につきましては、下記の記事をご覧ください。
4-3.利回り
代表的な利回りとして、
・表面利回り
・実質利回り
・ROI(投資収益率)
があります。
投資物件情報の大半は、表面利回りです。
図8に、表面利回り・実質利回り・ROIの算出式を挙げています。
4-3-1.目指す利回り
大都市と大都市郊外、地方都市では、購入価格や家賃が異なるため、確保しなければならない利回りを一概にいうことはできません。
しかし、あえて目安となる利回りを算出します。
筆者の
・アパート経営の経験
・大家仲間との情報交換
・調査した成功大家のブログ
の中で出しました。
しかし、これだけの利回りが出る物件は、不動産ポータルサイト上には、なかなか出ません。
4-3-2.利回り確保のための仕込み
そこで、利回りを確保するために値引き交渉をします。
ケースによっては、5,000万円前後のアパートを購入する際、1,000万円~2,000万円の値引き交渉を行いますが、当然にして値引き交渉直後は断られます。
ここで重要なことは、上述しましたように、断られることを前提として買付証明書を出しておくことです。
相続人は様々な事情を抱えています。
・相続発生から10か月以内に相続税の納税
・相続発生から数年経過後も、遺産分割で揉めている
・相続人が、アパート経営に関心が無い場合が比較的多い
・築20年前後のアパートはローン残債が少ない → 売却し易い
・遺産分割協議において不動産だと共有名義などで揉めるが、現金化すると分割し易く揉めない
などです。
売却当初は、少しでも高く売りたいという心理が働き、強気で売却しようとします。
しかし、時間が経過するとともに売却できずに売れ残りの状態に近くなりますと、徐々に焦りが出てきて値引きを考えるようになります。
売却を始めて半年経過すれば、効果が少しずつ出始めます。
なお、利回りによる物件探しの詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。
4-4.登記簿謄本
不動産ポータルサイトから条件検索した上で、具体的な物件を検討する際、物件概要書だけでは所有者のいきさつが何もわかりません。
そこで、検討する物件を仲介する不動産業者を通して、土地・建物の登記簿謄本(土地・建物全部事項証明書)を取り寄せてもらいます。
登記簿謄本には、
・土地の所在地、種類、敷地面積、取得原因、登記日付
・建物の所在地、種類、構造、床面積、取得原因、登記日付
・権利部(甲区):登記の目的、受付年月日、権利者(共有者・共有割合)、権利者住所、取得原因
・権利部(乙区):抵当権(借入日、借入金額、金融機関名、利息、残債の有無)
が記載されています。
所有者が、売買や相続、贈与などで変わったとしても、その履歴が全て記載されています。
そこで、相続アパート物件の有無が判明できます。
事例1は、筆者が相続アパート物件を約1,200万円の値引き交渉をして購入した際の建物登記簿謄本(全部事項証明書)の一部です。
個人情報の兼ね合いもあり、不動産番号・家屋番号・受付番号・住所番号は記載しておりません。
登記簿謄本の記載事項を丁寧に把握することにより、所有者の様々な背景がわかり、値引き交渉のための理由を見出し、説得力ある営業ができます。
大半の投資家は、登記簿謄本を取り寄せることなく物件概要書だけで判断しますので、「お宝物件」に出会う可能性は極めて低くなります。
5.まとめ
以上、
1.相続市場の規模
2.アパート購入における不動産業者の目線
3.アパート相続物件の特徴
4.アパート相続物件の探し方
について解説しました。
ポイントは、
・相続アパートは不動産ポータルサイトや大手不動産会社サイトに掲載
・築20年前後、利回り10%以上の物件を抽出(表3参照)
・不動産仲介業者を通して登記簿謄本を取り寄せ、所有者・相続の有無・借入残高(推測)を確認
・所有者が不動産業者の場合、利益が上乗せされているので却下
・相続アパート物件は、値引き交渉がし易い。
ただし、交渉直後は断られることを前提として時間をかける。
などです。
ポイントを外さずにアパート探しを行なえば、「お宝物件」を見つけ出すことは困難ではありません。
是非、読者の皆様にも試してもらいたいです。
6.参考・引用Webサイト
※1 「大相続時代:金融機関に求められるアプローチ」
野村資本市場研究所
http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2011/2011aut07.pdf
※2 「令和元年分 相続税の申告事績の概要」
国税庁
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf
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