不動産の活用を検討する際、「不動産経営」と「不動産投資」という言葉があります。
「不動産経営と不動産経営に違いはあるのだろうか?」
と疑問に感じられた方はいませんか?
実は、事業経営と運用方法の違いであり、不動産に対する本質的な経営姿勢の違いでもあります。
ポイントは、不動産経営に重点を置くか否かです。
<目 次>
1.不動産投資は運用方法の一つ
投資には、株式投資やFX投資・投資信託・公社債投資・RIET・個人年金保険などの金融投資や現物である土地・建物に投資する不動産投資があります。
したがって、不動産投資は、運用方法の一つです。
投資は、現在保有する資金を投入し、資本の増加を図ると同時に、リスクを抱えることも意味します。
投資をリスクの度合いにより分類しますと、下表の通りです。
不動産投資は、リスクとリターン(利回り)が中間に位置します。
リスクとリターンのバランスを重視する人にとっては、検討し易い投資といえます。
ただし、不動産投資においても、リターン(収益性)が高い不動産ほど、リスクの割合も高くなる傾向にあります。
例えば、アパート・マンション経営の場合、
・大都市部の場合:価格が高いので、リターン(利回り)は低くなるが、空室率などのリスクも低くなる。
・地方都市の場合:価格は安いので、リターン(利回り)は高くなるが、空室率などのリスクも高くなる。
などです。
なお、地方都市でのアパート経営については、下記の記事をご覧ください。
1-1.不動産投資は不動産経営までは考えない
不動産投資を行う場合、不動産経営に対して甘く考えている人が多く見受けられます。
中には、自主管理はおろか管理会社へ管理委託もせず、いきなり「一括借り上げ」を依頼して、運営を行うケースもあります。
しかし、空室リスクを補うために「一括借り上げ」を採用した投資家は、一括借り上げのリスクの高さに後日気づきます。
結果として、収益がほとんど出ないばかりか赤字となり、株式投資のように損切りする感覚で、不動産を売却する事例が多数あります。
不動産投資のために、アパート・マンションの様な収益物件を購入しても、不動産経営を行う考えに至っていない投資家が多くいます。
1-2.不動産投資は不動産経営に対する考えが甘い
収益物件に投資し、不動産オーナーになったとしても、不動産経営に対する考えが甘く、何も準備をしていない投資家も見受けられます。
不動産経営を自主管理か管理会社に管理委託して始めたところで、知識やスキルが無ければ、
・入居者からの要望やクレーム
・建物・設備の劣化・損傷
・管理会社からの伝達事項
などに対して迅速に応えることはできません。
結果として、すぐに手放す羽目に陥ります。
1-3.これまでの不動産投資のメリットは通用しない
金融投資と比較して、これまでの不動産投資のメリットは、
①土地・建物の現物資産を所有できる
②毎日の収益の変動幅が小さい
③不労所得:オーナーの手間がかからない
(一括借り上げ、管理委託)
④不動産に関するオーナーのスキルや知識は不要
などです。
上記事項の③、④に関しては、通用しなくなっていますので、うのみにしますと命取りになります。
不動産経営が不労所得になるのは、自主管理で不動産経営を行い、入居者管理・建物管理において、そつなくこなせる様になったオーナーに限ります。
そこに至るまでには、通常約3年かかります。
また、不動産に関するオーナーのスキルや知識は必須です。
筆者の場合、アパート経営・区分マンション経営、戸建て賃貸経営を自主管理で行っていますが、不労所得といえるまでに、やはり3年かかりました。
1-4.メリットが通用しない背景には人口減少
これまでの不動産投資のメリットが通用しない背景には、2008年をピーク(1億2,808万人)とした人口減少問題があります。
(出所:厚生労働省)※1
日本の人口は、右肩下がりの状況であり、住宅系賃貸不動産の需要は減少します。
特に地方部において、人口減少が激しく、不動産投資は、益々立地選定の重要度が大きくなります。
2.不動産経営は事業経営の一つ
不動産経営は事業経営の一つです。
不動産経営に対して準備して臨む人は、成功確率が上がります。
不動産経営のノウハウ・スキルを習得し成功しますと、不動産投資の成功確率が上がります。
2-1.不動産経営で儲けるには?
不動産経営で儲けるためには、総収支となるキャピタルゲイン(売買差益)とインカムゲイン(家賃収支)との和が、プラスになる必要があります。
キャピタルゲイン + インカムゲイン
=(売却価格 ― 購入価格)+(家賃収入 ― 支出) > 0 : 成功
キャピタルゲイン + インカムゲイン < 0 : 失敗
2-1-1.キャピタルゲイン(売買差益)をプラス
キャピタルゲイン = 売却価格 ― 購入価格 > 0
しかし、不動産経営を怠り、家賃収入が低下し、利回りが悪化しますと、
キャピタルロス = 売却価格 ― 購入価格 < 0
になる可能性が高くなります。
2-1-2.インカムゲイン(家賃収支)をプラス
インカムゲイン = 家賃収入 ― 必要経費 ― ローン返済額 > 0
しかし、不動産経営を怠り、家賃収入が低下しますと、インカムロスになる場合もあります。
インカムロス = 家賃収入 ― 必要経費 ― ローン返済額 < 0
2-2.キャピタルゲインとインカムゲインの収支結果
キャピタルゲインとインカムゲインの合計によるアパート経営の判定を下表にまとめます。
合計によるアパート経営の判定(目安)
3.不動産投資と不動産経営の違い
不動産投資は、キャピタルゲイン(売買差益)重視の側面があります。
そこには、不動産経営を軽視する嫌いがあります。
また、不動産の所有期間は、傾向として短くなります。
不動産投資の結果は、キャピタルゲインとインカムゲインの総和の金額になります。
不動産経営は、インカムゲイン(家賃収支)重視の側面があります。
不動産の所有期間は、傾向として長くなります。
不動産経営の結果は、不動産投資と同様に、キャピタルゲインとインカムゲインの総和の金額になります。
不動産投資と不動産経営は、別々のものではなく、車の両輪のような関係です。
片方だけでは成り立ちません。
4.不動産オーナーには、不動産投資も不動産経営も必要
不動産投資と不動産経営は、不動産オーナーにとって両方とも必要なスキルでありノウハウです。
4-1.不動産オーナーにはバランスが必要
不動産投資(売買差益)だけでプラスにすることは難しく、所有期間に不動産経営(家賃収支)においてもプラスを出す必要があります。
一方、不動産経営だけでプラスにすることも難しく、不動産投資においてもプラスを出す必要があります。
したがって、不動産オーナーは、不動産投資と不動産経営をバランス良く行うことが、成功への鍵と言えます。
4-2.割合は不動産オーナーにより相違
不動産投資と不動産経営の割合は、必ずしもフィフティフィフティである必要はありません。
不動産投資の割合が大きいタイプの不動産オーナーもいれば、不動産経営の割合が大きい不動産オーナーもいます。
それは、不動産の所有期間に対する考え方にも表れます。
・不動産所有期間の短い(5年未満)不動産オーナーは、不動産投資を重視する傾向にあります。
・不動産所有期間の長い(5年以上)不動産オーナーは、不動産経営を重視する傾向にあります。
どちらが良い悪いではありません。
不動産オーナーのスタンスの違いです。
いずれにしても
・キャピタルゲイン + インカムゲイン > 0 : 成功
・キャピタルゲイン + インカムゲイン < 0 : 失敗
といえます。
5.不動産経営におけるアパート経営
アパート経営は、低層(1~3階まで)の共同住宅1棟を所有し、入居者管理・建物管理・資金管理を行いながら収益を上げる事業です。
5-1.アパート経営の目的
アパート経営の主な目的は、
・収入アップ(年金対策)
・不労所得の確保
・節税対策(相続税対策、所得税対策、固定資産税対策)
などが挙げられます。
5-2.アパート経営の具体的な仕事内容
アパート経営の具体的な仕事内容を下表にまとめます。
REIT(不動産投資信託)などの投資商品を利用する場合と比較しますと、手間がかなり発生します。
アパート経営の入居者管理・建物管理の手間を省くために、不動産管理会社に管理委託する場合もあります。
その際、家賃収入の5%前後の管理委託料が発生し、キャッシュフロー(手残り額)が減少します。
なお、アパート経営の具体的な仕事内容の詳細については、下記の記事をご覧ください。
また、アパート経営の準備、購入、運営、売却の手順については、下記の記事をご覧ください。
6.まとめ
以上、
1.不動産投資は運用方法の一つ
2.不動産経営は事業経営の一つ
3.不動産投資と不動産経営の違い
4.大家には、不動産投資も不動産経営も必要
5.不動産経営におけるアパート経営
について解説しました。
・不動産投資は、キャピタルゲイン(売買差益)重視
・不動産経営は、インカムゲイン(家賃収支)重視
の側面があります。
いずれにしても
・キャピタルゲイン + インカムゲイン > 0 : 成功
・キャピタルゲイン + インカムゲイン < 0 : 失敗
といえます。
不動産投資と不動産経営をバランス良く検討されながら、不動産に取り組まれることをおすすめいたします。
7.出所
※1 「人口減少の見通しとその影響」
厚生労働省
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