アパート経営を始める際、先ずは中古アパートを購入するところから取組む方もおられます。
「利回りと収入はいくらなのだろうか?」
「デメリット・リスクは何なのだろうか?」
「成功するための物件選択のポイントは何だろうか?」
と悩んでおられる方はいませんか?
実は、物件選択には優先順位があり、それを間違えなければ収益性は高くなり、デメリット・リスクは小さくなります。
ポイントは、物件選択における優先順位は、立地、価格・築年数、利回り、設備です。
<目 次>
1.中古アパート経営の利回りと収入
中古アパートは、
・築1年を経過したアパート
・一度売買され、名義変更がなされたアパート
です。
1-1.中古アパートは儲かるのか?
中古アパートは、儲かるのかを他の形態と比較します。
アパート・マンション経営には、下記の6種類の形態が考えられます。
・新築アパート(1棟)
・中古アパート(1棟)
・新築マンション(1棟)
・中古マンション(1棟)
・新築区分マンション(1戸)
・中古区分マンション(1戸)
これらの形態を、一般的な傾向として、収益性が高くなる順に並べますと、下表の通りです。(目安)
ここで、立地、建築構造、中古は築年数:20年と同じ条件とします。
ただし、他の要因として、ローン条件(金利・借入期間)、維持管理状況、入居率などにより、収益性の順位は前後します。
6種類のアパート・マンション経営において、一番儲かるのは中古アパート経営です。
理由は、1戸当たりの購入費を比較しますと歴然です。
その根拠を下記で解説します。
1-2.中古アパート経営の収入と支出
上記において、中古アパート経営は儲かると述べました。
その収益構造を以下で解説します。
1-2-1.アパート経営の収入
アパート経営の収入には、家賃、共益費、礼金、敷金、更新料などがあります。
ただし、地域によりそれぞれの収入に対する考え方、徴収の方法は異なります。
1-2-2.中古アパートの購入費
中古アパートの購入費は、建築構造、立地、築年数、入居率、維持管理状況により異なります。
1-2-2-1.アパートの構造別新築単価
アパートの建築構造は、木造か軽量鉄骨造が一般的となります。
一部に重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造のアパートがあります。
各建築構造の坪単価の目安を下表にまとめます。
1-2-2-2.立地
アパートの購入費は、立地により大きく異なります。
理由は、土地の評価が異なるからです。
大都市では、土地購入単価が高くなり、地方都市では安くなります。
また、建築単価につきましても、大都市では高くなり、地方都市では安くなります。
1-2-2-3.築年数
公益社団法人東日本不動産流通機構による「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2018年)」の報告書の中に、「中古マンションの築年帯別平均価格」のデータがあります。(※1)
中古区分マンションは、年数経過とともに価格が下がります。
アパートの築年数と価格の関係は、必ずしもこの通りではありませんが、同様な傾向となります。
築20年前後の場合、売却価格は新築価格の50%~60%になります。
ただし、アパートなどの賃貸住宅は、収益還元法(利回り)による評価も売却価格に反映されます。
利回りが高い物件になりますと売却価格を高めに設定でき、利回りが低い物件になりますと売却価格を低めに設定する傾向にあります。
1-2-3.中古アパートの購入時諸経費
中古アパート購入時もしくはアパート建築時の諸経費を下表にまとめます。
中古アパートの購入時諸経費は、アパート購入価格に対して7%~8%かかります。
ただし、測量費や境界確定費、明示費用などが必要になる場合、別途かかります。
したがって、アパート購入による総投資額は、
総投資額 = アパート購入価格 × 1.07
となります。
1-2-4.アパート経営の必要経費
アパート経営は、毎月必要経費が発生します。
必要経費の割合は、家賃収入の約20%になります。
1-2-5.アパート経営の税金
アパート経営にかかる税金を、購入時・運営時・売却時に分けてまとめますと下表の通りです。
1-2-6.アパート経営のローン返済額
アパート経営を始めるにあたり、大半の方が金融機関に対して融資を求めます。
ここで、不動産投資ローンとアパートローンの違いですが、
・新築の場合:アパートローン
・購入の場合:不動産投資ローン
となります。
不動産投資ローンの中にアパートローンが含まれます。
この記事では、主に不動産投資ローンについて解説します。
1-2-6-1.不動産投資ローンの種類
自己資金の持ち出し割合により、不動産投資ローンの種類は異なります。
下表に、ローン種類別ごとの自己資金と融資額の割合をまとめます。
1-2-6-2.不動産投資ローンの融資期間
不動産投資ローンの融資期間は、建物の法定耐用年数と築年数により決まります。
法定耐用年数は、建物が通常の利用の仕方により、建築構造別の使用に耐えうる年数を、国税庁が定めたものです。
新築アパートであれば、融資期間は30年~35年になる可能性が高くなります。
中古アパートであれば、法定耐用年数から築年数を差し引いた年数が、融資期間の目安となります。
中古アパート融資期間 = 法定耐用年数 ― 築年数
アパートの築年数による建築構造別融資期間を、下表にまとめます。
また、法定耐用年数を過ぎた物件を購入しますと、残存耐用年数は、
残存耐用年数 = 法定耐用年数 × 0.2
で計算されます。
例えば、木造アパートを購入する際、法定耐用年数を過ぎている場合には、
木造アパートの耐用年数=22年×0.2
=4年
となります。(小数点以下は切り捨て)
ただし、
・日本政策金融公庫
・地方銀行
・信用金庫
・ノンバンク
などの金融機関は、築年数が法定耐用年数を超えていても、融資期間を20年~30年に設定するケースがあります。
1-2-6-3.ローン返済額
不動産投資ローンを利用した場合、ローン返済額は、金利、融資期間により異なります。
下表に、金利、融資期間の違いによる100万円に対する毎月のローン返済額をまとめます。
*ローン返済額ローン返済額の計算は、「借入返済シミュレーション」を利用しています。(※3)
例えば、中古アパートを、借入金額:4,000万円、金利:3.0%、返済期間:25年の条件で不動産投資ローン融資を受けたとします。
毎月のローン返済額の目安は、上表より、
4,742円×(4,000万円÷100万円)=189,680円
となります。
1-2-6-4.ローン返済比率
ローン返済比率は、毎月の家賃収入(満室時)に占めるローン返済額の割合です。
例えば、アパートの家賃収入が50万円/月の際、ローン返済額が25万円/月であれば、
ローン返済比率=25万円÷50万円
=50%
となります。
支出の中で、ローン返済額の割合が一番大きくなります。
ローン返済比率を40%以下に抑えますと、アパート経営は安全圏に入ります。
ローン返済比率が60%以上になりますと、アパート経営は危険な状態になります。
なお、不動産投資ローンの詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。
1-2-7.キャッシュフロー
キャッシュフローは、家賃収入からローン返済額や必要経費を差し引いた手残り額です。
キャッシュフロー = 収入―支出
= 家賃収入―(必要経費+ローン返済額)
= 家賃収入―(必要経費+利息+元金)
自己資金を多く出資すれば、ローン返済額が減り、キャッシュフロー(手残り額)が増えます。
自己資金を少なく出資すれば、ローン返済額が増え、キャッシュフローは少なくなります。
ローン返済額、必要経費、空室率を考慮したキャッシュフローの割合は、約20%です。
なお、キャッシュフローの詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。
1-3.アパート経営の収益性(利回り)
アパート経営の利回りには、代表的なものとして、表面利回り、実質利回り、ROI(投資収益率)があります。
投資物件情報の大半は、表面利回りです。
表面利回り・実質利回り・ROIの算出式を下記に挙げます。
表面利回り = 満室賃料 ÷ 物件購入価格 × 100(%)
実質利回り =(満室賃料 ― 必要経費)÷(物件購入価格 + 購入時諸経費)× 100(%)
表面利回りと実質利回りの違いは、必要経費と購入時諸経費の有無です。
ROI =(満室賃料 ― 必要経費 ― ローン返済額)÷(物件購入価格 + 購入時諸経費)× 100(%)
ただし、どの計算式も満室賃料で計算されています。
実際には、満室状態が続くことはあり得ません。
そこで、実質利回りとROIについて、空室率を加味した計算式を挙げます。
実質利回り =(満室賃料 ― 必要経費)÷(物件購入価格 + 購入時諸経費)×(100 ― 空室率)(%)
ROI =(満室賃料 ― 必要経費 ― ローン返済額)÷(物件購入価格 + 購入時諸経費)×(100 - 空室率)(%)
空室率 =(空室戸数 × 空室月数)÷(全戸数 × 12か月)× 100(%)
金融機関の融資審査において、空室率を加味したROIの計算式を採用しているところが多いです。
ちなみに、
・空室率:20%
・現行金利+2%
の条件で入力した計算結果が、プラスになるか否かを見ています。
なお、利回りの詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。
1-4.中古アパートの収益性(シミュレーション)
中古アパートと新築アパートの収益性を比較します。
1-4-1.事例1:中古アパート
自己資金と不動産投資ローン融資額の割合を変えながら、ローン返済比率やキャッシュフローを算出してみます。
【事例1】
中古の木造2階建てアパートを購入した場合、自己資金の違いによるキャッシュフローを算出します。 条件設定を下表にまとめます。
上記アパート条件設定の基に、自己資金のケースを下表のように分類します。
ケース1~4のキャッシュフローを算出しますと、下表の通りです。
キャッシュフローの違い
自己資金として、アパート購入価格の30%+購入時諸経費を準備すれば、ROI(投資収益率)を3.5%出すことができます。
1-4-2.事例2:新築アパート
【事例1】と同様に、自己資金と不動産投資ローン融資額の割合を変えながら、ローン返済比率やキャッシュフローを算出してみます。
【事例2】
木造2階建てアパートを新築した場合、自己資金の違いによるキャッシュフローを算出します。 条件設定を下表にまとめます。
上記アパート条件設定の基に、自己資金のケースを下表のように分類します。
ケース1~4のキャッシュフローを算出しますと、下表の通りです。
キャッシュフローの違い
1-4-3.中古アパートと新築アパートの比較
事例1:中古アパートと事例2:新築アパートの違いを下表にまとめます。
中古アパートと新築アパートを比較しますと、表面利回りや実質利回りは、中古アパートの方が格段に良くなる傾向にあります。
理由は、経年による建物下落率の方が、家賃下落率よりも大きくなるためです。
ただし、ROI(投資収益率)も良くなりますが、差はあまりありません。
理由は、中古アパートの融資条件ですが、新築アパートと比較しますと金利が高く融資期間が短くなるため、ローン返済額の割合(ローン返済比率)が大きくなるためです。
1ー5.中古アパート経営を始めるために必要な自己資金
ローン返済比率は、50%以内に収めることが大切です。
「1-4.中古アパートの収益性(シミュレーション)」の事例1、事例2を考察しますと、自己資金として購入費の10%+購入時諸経費を準備しますと、ローン返済比率が50%で収まります。
条件設定により異なりますが、少なくとも自己資金として
購入費の10%+購入時諸経費
は、準備しておいた方が賢明です。
2.中古アパート経営のデメリット・リスク
中古アパート経営のデメリットは、
・修繕費がかかる
・遮音性が劣る
・防犯性が劣る
・空室・家賃下落リスク
・家賃滞納リスク
・入居者トラブルリスク
などがあります。
2-1.修繕費がかかる
中古アパートは、購入した時点で既に20年前後経過した建物が多くなります。
丁度、建物や設備・器具に、劣化・損傷が出やすいタイミングです。
老朽化した建物を維持せず、劣化・損傷したままにしますと、
・入居者の減少 → 空室率増大
・家賃下落 → 収入減少
に繋がります。
また、放置する期間が長くなるほど、後々の修繕費用も高くなります。
対策として、劣化・損傷に気づけば早めに手を打つことで、修繕費用も安くなります。
また、毎月家賃の5%程度を修繕積立金として蓄えておくことも重要です。
日頃のまめな点検、管理、修繕費の積立が一番の対策です。
なお、アパートの修繕費については、下記の記事をご覧ください。
2-2.遮音性が劣る
アパートは、木造もしくは軽量鉄骨造で建築されるケースが多くなります。
したがって、鉄筋コンクリート造で建築されたマンションと比較しますと、遮音性に劣ります。
その結果、騒音による入居者トラブルが、起こる可能性があります。
問題を起こす入居者が発覚した場合、速やかに大家もしくは管理会社が接触を図り、コミュニケーションをとって解決する必要があります。
2-3.防犯性が劣る
アパートの場合、来訪者が直接、行先の住戸の玄関前まで行くことができます。
出入りが、比較的自由になりますので、防犯性という観点では劣ります。
マンションの場合、共用部分のエントランスにオートロックが標準で設置されています。
住民以外の人が、自由に出入りすることはできません。
また、防犯カメラの設置も標準で行われており、侵入者に対する抑止効果があります。
今後は、アパートにおいても防犯カメラの設置は必須となります。
2-4.空室・家賃下落リスク
空室は様々な原因で生じます。
その主な原因は、
②~④は、後からでも改善できますが、①は改善できませんので、致命的となります。
空室が多く長期化しますと、
・家賃設定を下げる
・ローン返済に支障をきたす
などの事態になります。
最悪の場合には、自己資金から補填をしないといけなくなります。
それらを防ぐためにも、空室問題に対しては、最大限の努力を注ぐ必要があります。
空室問題を克服できるか否かが、アパート経営を成功するか否かの分岐点ともなります。
「できる大家」の一番の腕の見せ所となります。
2-5.家賃滞納リスク
アパート経営の最大のデメリットは、家賃滞納です。
これは空室よりも厄介な状態です。
部屋を使用されて入居者が家賃を払わないのですから、大家の精神状態にも大袈裟ではなく支障をきたします。
対策として、司法書士や弁護士に依頼して法的に解決する方法がありますが、多額の経費を要します。
2-6.入居者トラブルリスク
アパート経営において、入居者トラブルの発生は、ある程度想定しておく必要があります。
例えば、
・騒音問題:大音量で音楽を聴く、楽器を演奏する、奇声を発する
・水漏れ :上階の水回りから流水
・禁止されているペットの飼育:犬、猫など
・ゴミ出し:ゴミ出し日と違う日にゴミが出され散乱
などです。
入居者トラブルが発生した場合、速やかに大家か管理会社が出向き、本人と確認する必要があります。
トラブルの原因者が特定できれば、コミュニケーションを図り、問題の解決を図ります。
建物に原因がある場合、早急に修繕工事を図る必要があります。
一度で解決しない場合、次回から注意書などの書類を問題の入居者に提示し、面会日時・会話内容・提示した書類の記載内容などを記録します。
それでも治まらない場合、ケースによっては警察に連絡し、事情聴取をしてもらいます。
最終的には、司法書士や弁護士に依頼し、退去勧告へと進みます。
いずれにしましても、早い対応が必要です。
放置しますと、他の入居者が退去する可能性があります。
筆者が、実際に騒音を出す入居者を退去させた事例があります。
その様子を記事にしましたので、よろしければご覧ください。
3.中古アパート経営のメリット
中古アパート経営のメリットは、
・1戸当たりの購入費が安い
・利回りが高い
・収入増加を図れる
などがあります。
3-1.1戸当たりの購入費が安い
アパートの建物は、木造や軽量鉄骨造で建築されているケースが多くなります。
地域により異なりますが、木造や軽量鉄骨造の坪単価は、
・木造 :約60万円/坪
・軽量鉄骨造:約75万円/坪
となります。
一方、マンションの建物は、鉄筋コンクリート造で建築されているケースが多くなります。
地域により異なりますが、鉄筋コンクリート造の坪単価は、約100万円/坪となります。
【事例3】
木造2階建て5戸並びのアパート概算建築費を算出します。(1㎡=0.3025坪)
建物条件は、
・間取り:1K27㎡(3m×9m)、全戸床面積:270㎡
・ベランダ(1戸当たり:1.2m×3m)、全ベランダ床面積:36㎡
・廊下(1.5m×15m×2F)全廊下床面積:45㎡
・階段(3m×5m×2F)階段床面積:30㎡
・建物総床面積:270+36+45+30=381㎡(=115坪)
このケースの場合のアパート概算建築費は、
115坪 × 60万円/坪 = 6,900万円
となります。
1戸あたりに換算しますと、690万円になります。
また、経年による中古アパートの価格は、築20年になりますと、約6割の評価になります。
例えば、事例3の場合ですと、4,140万円になり、1戸あたり414万円になります。
都心部で販売されているワンルームマンション(1K:27㎡)の販売価格は、2,500万円~4,000万円します。
中古ワンルームマンションでも、1,500万円~3,000万円します。
したがって、1K:27㎡の金額を1戸あたりに換算しますと、下表の通りです。
1戸当たりの価格は、分譲マンションの方が、アパートと比較して、約3~4倍高いことがわかります。
3-2.利回りが高い
同じ間取りで同じ床面積のマンションとアパートの家賃を比較しますと、マンションは、アパートよりも高くなる傾向にありますが、その差は2~3倍までです。
また、同じ間取りで同じ床面積の新築アパートと中古アパート(築20年)の家賃を比較しますと、新築アパートは中古アパートよりも高くなる傾向にありますが、その差は1.3倍までです。
一方、同じ間取りで同じ床面積のマンションとアパートの1戸当たりの価格を比較しますと、マンションは、アパートよりも3.5~5倍以上高くなる傾向にあります。
また、同じ間取りで同じ床面積の新築アパートと中古アパート(築20年)の1戸当たりの価格を比較しますと、新築アパートは中古アパートよりも1.6倍以上高くなる傾向にあります。
中古アパートと比較した場合、家賃比よりも価格比の方が断然高くなります。
したがって、中古アパートの利回りの高さを演出します。
3-3.収入増加を図れる
高入居率を維持することが前提となりますが、安定した収入を得ることができます。
【事例1】を見ますと、自己資金として、アパート購入価格の30%+購入時諸経費を準備すれば、残りの購入価格の70%を不動産投資ローンで賄うことができます。
その時のROI(投資収益率)は、3.5%と高くなります。
他の投資法(株式投資、投資信託など)では、金融商品を担保に金融機関から融資を受けて投資をすることはできません。
アパート経営は、土地・建物を担保として、金融機関から融資を受けて投資することができます。
いわゆる「レバレッジ効果」です。
投資額の大半をローンで賄い、返済しながら、ROI(投資収益率)を3%前後発揮できるのは、アパート経営の強みです。
4.中古アパート経営で成功するための物件選択
中古アパート購入における物件探しの優先順位は、
・筆者の不動産投資の経験
・大家仲間との意見交換
・成功大家のブログ
を鑑みまして、以下と通りです。
優先順位1位:立地(最寄り駅、人口、周辺環境、災害有無など)
優先順位2位:築年数・購入価格(出口戦略に影響)
優先順位3位:利回り(表面利回り・実質利回り・ROI)
優先順位4位:設備・器具
この4つのポイントを、それぞれ突き詰めて検討することが重要です。
4-1.優先順位1位:立地
アパート購入における物件探しの優先順位1位は、立地です。
立地を間違えますと、取り返しのつかない事態となります。
なぜなら、空室問題・家賃下落問題に直結するからです。
4-1-1.人口20万人以上の都市から選択(※4)
入居候補者が、見込める地域を要するため、最低限の母数が必要になります。
日本の大都市制度は、
・政令指定都市(人口50万人以上)
・中核市 (人口30万人以上)
・施行時特例市(人口20万人以上)
の3段階になっています。
2021年10月時点で、人口20万人以上の都市は、全国で129都市あります。(※4)
人口20万人以上は、あくまでも目安ですが、
・将来の人口増加率
・減少率
も併せて見極めての立地選択が重要です。
4-1-2.最寄り駅から徒歩15分以内(※5)
最寄り駅から徒歩15分以内、できれば徒歩10分以内の立地が良いです。
最寄り駅も
・人気路線
・快速や特急の停車駅
ならば、なお良いです。
LIFULL HOME’Sの「見える!賃貸経営」によりますと、入居者ニーズは、最寄り駅から徒歩15分を超えますと、極端に下がる傾向にあります。(※5)
最寄り駅から、さらにバスに乗車する必要がある立地は、強力な差別化ポイントが無い限り、避けた方が賢明です。
4-1-3.周辺環境
生活利便施設がアパート立地近くにあり、
・買い物が便利
・病院が近くにある
・公園が近くにある
などの環境が整いますと、入居者は喜びます。
一方、
・治安が悪い
・工場が密集し、騒音・悪臭がする
・倉庫が密集し、大型トラックが頻繁に往来
などの地域は、入居者は敬遠します。
物件の選択は、必ず現地に行き、周辺環境も自身の目で確認することが大切です。
4-1-4.災害発生地域は避ける
災害発生の高い地域は、避けるできです。
自治体が作成したハザードマップなどを確認して調べます。
例えば、
・地震による津波発生地域
・台風による高潮発生地域
・大雨による河川洪水発生地域
などです。
万が一、災害に見舞われた場合、アパート経営の根幹に関わる事態となります。
4-2.優先順位2位:築年数・購入価格
築年数と購入価格は、金融機関による融資や利回り、出口戦略に大きく影響します。
4-2-1.築年数と金融機関・金利・利回りの関係
どの築年数・価格帯を狙うかは、単純に決められません。
アパートの構造と融資期間、金利の違い、利回りによって違います。
それらを簡略化しますと、下表になります。
金融機関へは、取引きが無い場合、不動産会社を通して接触を図った方が賢明です。
飛び込みは、相手にされないケースが多くなります。
4-2-2.筆者の購入・売却(出口)戦略
筆者は、購入と売却をセットで計画します。
築20年過ぎのアパートを購入し、築30年過ぎで売却します。
それを繰り返します。
購入する際に、売却すること(出口戦略)を既に考慮しています。
インカムゲイン(家賃収入)がプラスになるのは当然として、キャピタルゲイン(売買差益)でもプラスを狙います。
築年数が経過するとともにアパート価格が下がる環境下において、キャピタルゲインをプラスにすることは、容易なことではありません。
しかし、所有する約10年間の仕込みにより、
・インカムゲイン :プラス
・キャピタルゲイン:プラス
は可能になります。
出口戦略を成功させるには、利回りと管理(入居者管理・建物管理)が鍵となります。
その詳細につきましては、下記記事の「4.アパート経営の手順4:アパート売却」をご覧ください。
4-3.優先順位3位:利回り
利回りは、キャッシュフローや出口戦略に影響します。
利回りには、表面利回り、実質利回り、ROI(投資収益率)がありますが、物件選択の際に使い分けをします。
4-3-1.利回りによる物件探し
投資判断のための利回りの使い方ですが、物件候補選択などに使うのが、表面利回り・実質利回りです。
最初に不動産物件に対する検索機能の付いた
・「楽待」(※6)
・「健美家」(※7)
・「LIFULL HOME’S」(※8)
などのWEBサイトから物件探しを行います。
「表面利回り」にて、例えば10%以上と入力し、物件候補を数十件ほど抽出します。
この段階で、大まかに立地・価格・築年数を点検し、該当しないものは外します。
そこから「実質利回り」にて絞り込みをします。
実質利回りの計算式の中で、必要経費の目安は、
・アパートの場合、満室賃料の約20%
・EV付マンションの場合、満室賃料の約25%
です。
購入時諸経費は、アパート・マンション購入価格の約7%前後です。
次の「実質利回り概算式」での算出結果が、例えば7%以上の物件に設定した場合、該当しなければ外します。
実質利回り ={満室賃料 ×(100 - 20%)}÷{物件購入価格 ×(100 + 7%)}× 100(%)
残った物件を最終的にROIで比較します。
ローン返済額は、金利、借入期間、自己資金投入額により違います。
それらの条件を変えながら、シミュレーションし、比較検討します。
ROIの目安を、例えば2.5%以上に設定したとします。
2.5%に満たなければ、その物件を除外するか、
・自己資金の増額
・金利のさらに安い金融機関の選択
・返済期間の延長
などを調整して2%以上を確保します。
また、この段階でも最終的に立地・価格・築年数を再点検し、検討し直します。
ここまで絞り込みますと、空室が数戸出ても、経営が耐えられるアパートになります。
ROIの特徴は、
・建築構造
・購入金額
の異なる物件を比較検討できる点です。
以上をまとめますと、
・表面利回り・実質利回りは物件候補の選択
・絞り込みに使用・ROIは、最後の投資判断の決め手に使用
4-3-2.筆者の利回り戦略
大都市部と大都市郊外と地方都市とでは、購入価格が異なるため、確保しなければならない利回りを一概にいうことはできません。
しかし、初心者が目指す利回りと投資家が目指す利回りとを分けて出します。
筆者の
・アパート経営の経験
・大家仲間との情報交換
・成功大家のブログ調査
の中で出てきた利回りをまとめてみました。
4-3-2-1.初心者が目指す利回り
アパート経営初心者が目指すべき利回りは、下表の通りです。
最低限度の利回りの目安
4-3-2-2.投資家が目指す利回り
アパート経営投資家が目指すべき利回りは、下表の通りです。
儲かる物件の利回りの目安
4-4.優先順位4位:設備・器具
「全国賃貸住宅新聞」が、「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」ランキングを毎年実施しています。
その中で「インターネット無料」が、単身者向け・ファミリー向けともに、2016年から2021年にかけて6年連続1位を獲得しました。
それだけアパート・マンションの入居率向上にとって、「インターネット無料」は、必須アイテムになっています。(※9)
4-4-1.単身者向け設備ランキング
「全国賃貸住宅新聞」が発表した、2019年から2021年までの3年間における、単身者向け「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」ランキングを下表にまとめます。
単身者向けランキング
(出所:全国賃貸住宅新聞)※9
4-4-2.ファミリー向け設備ランキング
「全国賃貸住宅新聞」が発表した、2019年から2021年までの3年間における、ファミリー向け「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」ランキングを下表にまとめます。
ファミリー向けランキング
(出所:全国賃貸住宅新聞)※9
最近の動向としましては、「宅配ボックス」が上位に上がっています。
なお、インターネット無料の詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。
5.まとめ
以上、
1.中古アパート経営の利回りと収入
2.中古アパート経営のデメリット・リスク
3.中古アパート経営のメリット
4.中古アパート経営で成功するための物件選択
について解説しました。
中古アパート経営は、アパート・マンションのどの形態よりも儲かる方法です。
理由は、1戸当たりの購入費が一番安くなるからです。
また、中古アパートを購入する際の物件選択は、中古アパート経営の中で、最重要事項となります。
物件選択により、アパート経営の成功・失敗は80%決定します。
優先順位として、立地、築年数・購入価格、利回り、設備・器具となりますが、一つ一つを掘り下げて検討することが重要です。
特に初心者の方は、中古アパート経営から始めることを、おすすめいたします。
6.参考・引用Webサイト
※1 「築年数から見た首都圏の不動産流通機構(2018年)」
公益財団法人東日本流通機構
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_201902.pdf
※2 「主な減価償却資産の耐用年数表」
国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf
※3 「借入返済シミュレーション」
https://www.busitec.com/cgi-bin/yuusi/hensai.cgi
※4 「日本の市の人口順位」
ウィキペディア
※5 「賃貸経営 賃貸需要」
LIFULL HOME’S
https://toushi.homes.co.jp/owner/saitama/eki4625/
※6 「収益物件を検索」
楽待
※7 「収益物件検索」
健美家
※8 「不動産投資」
LIFULL HOME’S
※9 「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」2021人気設備ランキング
全国賃貸住宅新聞
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